太田記念美術館

油絵、山水画、狩野派、写実主義、ラスコーの壁画…知っている美術関係の言葉を列挙してみましたが、すぐに限界を迎えました。

今回は興味はあるものの、訪ねたことがない太田記念美術館に行ってきました。

都会の中にひっそりと佇む美術館

原宿駅から色づくイチョウ並木をくぐるように表参道を進み、まもなく左の路地に入ると、太田記念美術館があります。歩いて5分ほどです。

行きから帰りまで、「写真を撮る」あるいは「記録に残す」ということを失念しており、写真の1枚もないことを前もっておことわりいたします…。

太田記念美術館の立役者は太田清蔵(おおたせいぞう、1893〜1977)という方で

1923年にシカゴ美術館を訪ねた際に、浮世絵が日本の代表的絵画であると認識したが、江戸末期より明治にかけ浮世絵が欧米に膨大な数量流出していた実情を嘆き、昭和の初めより半世紀以上に渡り浮世絵の蒐集に努め、約12000点のコレクションを集大成した。日本屈指と噂されながらも清蔵はその全貌を家族にさえ秘密にしており、「幻のコレクション」とされた。太田の死去にともない、遺族はその遺志を受け、太田のコレクションの一般展示を行い、我国の美術振興の一助とすることを決意し、1980年、浮世絵専門の美術館として、原宿・表参道に太田記念美術館を開館している。

(Wikipedia 2022/11/15)

約12000点のコレクションを月ごとに興味深いテーマを扱い、展示しており、いつ行っても異なる浮世絵作品に触れられるのが特徴です。

例えば、過去の展示会をご紹介すると

「江戸の敗者たち」

勝負事や競争、戦いなどで必ず生まれるのが勝者と敗者です。しかし吉良上野介や明智光秀のように、負けた側の人物が人々の記憶に残ることも珍しくありません。江戸時代の小説、歌舞伎などに登場し、浮世絵に描かれた敗者たちを紹介します。

「江戸の恋」

若い男女の初々しい恋、来世での縁を信じて死を選ぶ遊女。江戸時代には、あらゆる身分の男女の恋が歌舞伎や浄瑠璃で演じられ、浮世絵にも描かれました。激しい慕情につき動かされた、江戸の恋物語をご覧ください

「信じるココロ ―信仰・迷信・噂話」

情報にあふれ、何を信じるかが難しい昨今ですが、江戸時代の人々が信じる対象も実にさまざまでした。富士詣、流行神のような民衆信仰から、鯰が地震を起こすなどの迷信、噂話まで、浮世絵にあらわれた「信じるココロ」の諸相を探ります。

 

(太田記念美術館:http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/)

過去の展示会を振り返ると、観覧できなかったことを悔やまれるくらいに興味関心を引くものばかりです。

文化継承・発信・教育の場

私の中で浮世絵作品を鑑賞し、その作品の背景や制作前の工程などをしっかり拝見したのは初めてでした。今回、「闇と光 ―清親・安治・柳村」というテーマの展示会に鑑賞し、夕暮れや月明かり、燈明、そして、火事の現場での「光」と「闇」を1枚の中で表現されていました。線引きがない「光」と「闇」の間の領域に人それぞれ想いを馳せるものがあるのではないかと素人ながら考えを巡らしました。おそらく私よりも太田記念美術館のホームページ、1番は実際に足を運んでいただくことが浮世絵作品を味わうこととして良いのではないでしょうか。

また、太田記念美術館では江戸文化を学べる江戸文化講座や新進の研究者が浮世絵に関する研究成果を発表する若手研究者講演会、小中学生を対象とする浮世絵講座を学ぶ夏休み子ども講座、浮世絵の歴史や技法についての映画を上映する日曜映写会などを開催しております。芸術や美術、浮世絵を現代に広める。そして、次世代を育て、繋げていく。美術館を鑑賞するだけで終わらせることなく、先人たちの築いてきた技術や作品の文化的価値を後世に伝える空間がそこにはありました。お時間とお気持ちが重なりましたら、足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

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