曹洞宗のお寺の現状と課題

昨日、中学生にバスケットの指導をした時の話。
バスケットに全く関係のない質問を男の子に尋ねました、「将来は気仙沼で仕事をしたいと思ってる?」と、男の子は胸を張って「いや、全くです。東京で遊びながら仕事します!」と答えました。
私はそれを聞いて思わず笑いました。気仙沼と私に対して何一つ忖度しないところがいい意味で痺れました!
実際、気仙沼以外で生活してみないことには仕事や遊び、人間関係など、それらを比較することすらできません。比較することによって、気仙沼の良さ、東京の良さを実感し、自身が心身ともに豊かに生きれるところに辿り着くことでしょう。
曹洞宗の現状
今日の人口減少社会と超高齢化社会によって、特に過疎地域の寺院は今後切迫した状況を迎える、あるいはもう既にむかえている。過疎地域に立地する過疎地寺院の現状を把握し、具体的なデータからこれからの寺院の展望を見通す。主に『曹洞宗宗勢総合調査報告書 2015(平成27)』の他、それをもとに相澤・川又(2019)が考察を加えた『岐路に立つ仏教寺院 曹洞宗宗勢総合調査2015年を中心に』を参照する。
教団比較から、曹洞宗の現状をみると、5派(曹洞宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、浄土宗、日蓮宗)における過疎寺院の割合が明らかになったものの、各教団によって、寺院の分布や母数が異なるため受け止め方も異なっている。この5派内で比較的に全国(沖縄を除く)に分布し、最も寺院数の多い教団は曹洞宗である。また10地方中7地方(沖縄を除く)で最も過疎地寺院の割合が高く、曹洞宗寺院の約3ヶ寺に1ヶ寺は過疎地寺院という結果が明らかになった。相澤・川又(2019)によれば、宗派別の国全体の過疎地寺院は、曹洞宗30.2%、浄土真宗本願寺派26.7%、真宗大谷派20.8%、浄土宗15.6%、日蓮宗21.4%である。曹洞宗は過疎地寺院を多くかかえ、全国的に展開している現状を踏まえ、今後の問題解決への動向は日本の寺院の将来像を考える上でとても大きな役割を担っていると考える。
曹洞宗の課題
相澤・川又(2019)は『曹洞宗宗勢総合調査報告書 2005(平成17)年』をもとに過疎地寺院の格差に触れ、北海道管区の過疎地寺院の年間法人収入は771.4万円、近畿管区では209.9万円で、実に561.5万円もの格差が見られることを指摘した。これらが寺院消滅といった問題意識を全体で共有化できていない要因の一つではないだろうか。
2005年と2015年の調査から寺院の兼務化が進んでおり、非過疎地寺院に比べ、過疎地寺院の方がより顕著であった。この兼務寺院の増加は後継者の不足を意味する。その背景には、寺院後継者の育成や檀信徒の減少、伽藍の維持・管理など様々である。ただ、寺院を兼務することにより、安定した収入を確保できるという利点もあり、一概に否定的ではないにしろ、負担が増加することには変わらない。寺院数と寺院後継者数のずれが原因ではないだろうか。ただその問題解決までのアプローチは多角的な視点から取り組むべきであると考察する。
上記の問題を指摘してきたが、この根本的な問題を解決しないことには当ブログでも触れたが、「ソーシャル・キャピタルとしての寺院」を目指すには大きな弊害になってしまうだろう。一方で、問題によっては、ソーシャル・キャピタルとしての寺院を目指す中で、解決への糸口になるものもあると考える。
この他にも多くの問題が山積しているが今回は上記に留める。
おわりに
人口減少社会において、問題が生まれているのは宗教の分野のみに限らない。しかし、どの分野においても、初動が遅れてしまっては取り返しのつかない未来が待っている。ただその未来が「寺院が消えてもしょうがない」という時代であれば、甘んじて受け入れるしかない。現在、私はそのような思いは微塵もない。今後、「ソーシャル・キャピタルとしての寺院の可能性」について継続して、研究していき、檀信徒や地域に貢献できるお寺を参究する。
◆参考文献
曹洞宗宗務庁 (2017) 『曹洞宗宗勢総合調査報告書 2015(平成27)』
櫻井義秀・川又俊則 (2016) 『人口減少社会と寺院―ソーシャル・キャピタルの視座から』 法藏舘
相澤秀生・川又俊則 (2019) 『岐路に立つ仏教寺院 曹洞宗宗勢総合調査2015年を中心に』 法藏舘