絵本紹介#1『いつか あなたを わすれても』
朝晩が冷えるようになり、給湯温度を1度上げた本日でございます。
今回、私が最小限の文章と適切な絵でもって、しっかりとしたメッセージ性を伝えてくれる絵本の魅力に惹かれたこともあり、絵本紹介をいたします。
『いつか あなたを わすれても』 桜木紫乃(著)、オザワミカ(絵)
私(孫)とあ母さん、そして、さとちゃん(認知症のおばあちゃん)のお話を私(孫)の視点から描かれている絵本です。
簡単に内容としては
認知症のさとちゃんはお母さんのことを忘れていく中、私は戸惑いや悲しみの感情を抱いているにもかかわらず、お母さんはまるで平気。
そんな私に対して、お母さんは「これは たいせつな たいせつな わたしたちの じゅんばん」と優しく語りかけます。
この絵本は、私の視点からさとちゃんの認知症に触れ、お母さんとの会話を通して、私の心境の変化がうかがえます。読んだ後には、自分自身の気持ちを観察しても面白いと思います。
「おかあさん、わたしをわすれていいよ。わすれたほうが、さびしくないから。わすれたほうが、こわくないから」この言葉を、気持ちを、母に手渡したい。
その気持ちが、絵本というかたちになりました。著者 桜木紫乃
仏教的視点からの一考察
仏教における苦しみは、端的にいえば「思い通りにならないこと」です。
代表的な4つが、生老病死です。
「生」とは、老病死という苦悩を帯続ける命をもって生まれたこと。「老病死」は字の如くですね。老いることも、病気になることも、そして、いずれ死ぬことも至極、当然ではあるものの、「思い通りにならない」苦しみがまとわりついてきます。
しかし、この絵本で描かれるお母さんは、「さとちゃんは認知症にならないもの!」や「私のことを覚えてないの!」といった、執着する思いは全くなく、自然の理を理解しているような言葉に私自身ハッとさせられました。
生老病死を考えた時に、恐怖に慄くことも、不安に駆られるもあると思いますが、この絵本から「今」の大切さを気付かせてくれる作品だと思います。
ご興味あれば、ご一読ください。