赤ちゃんの泣き声

2月に子どもが生まれました。

生まれたばかりの赤ちゃんは、かすかに動かす手も足もとても小さく、呼吸の一回一回も、見ていてわかるほどに精一杯です。一生懸命に泣いている姿を見ていると、その小さな命の力強さに、こちらが勇気をもらうほどでした。

ところが、日々の子育ての中では、そうした感動ばかりでもありません。

最近では、オムツを替えても泣く。ミルクをあげても泣く。抱っこをしても泣く。こちらの疲れも重なってくると、「どうして泣いているのだろう」と、途方に暮れてしまうこともあります。

そんな様子を見ていた4歳の娘が、ある日、純粋な顔で聞いてきました。

「なんで泣いているの?」

正直なところ、私も聞きたいくらいでした。

けれども娘には、

「赤ちゃんは泣くのが仕事なんだよぉ」

と答えました。

娘に言いながら、どこか自分自身にもそう言い聞かせていたのだと思います。泣いていても仕方がない。赤ちゃんはそういうものだ。そう思うことで、自分の心に少しフタをしていたのかもしれません。

その日の深夜のことです。

いつものように赤ちゃんが泣き出しました。オムツを替えても、ミルクをあげても、抱っこをしても泣き止みません。

すると、その泣き声で4歳の娘が目を覚ましました。

眠そうに目をこすりながら、娘はひと言だけ言いました。

「なんで夜も仕事してんの?」

そう言うと、またすぐに眠ってしまいました。

その一言を聞いた瞬間、思わず膝を叩きたくなるような、心の底から腑に落ちる感覚がありました。

「赤ちゃんは泣くのが仕事」

私はそう言うことで、赤ちゃんの泣き声をどこか都合よく片づけていたのかもしれません。

けれども、生まれたばかりの時に見たあの姿を思い出しました。

小さな手足をかすかに動かし、ひと息ひと息を精一杯して、一生懸命に泣いていた姿。あの泣き声は、仕事という言葉で片づけるには、あまりにも一生懸命でした。

赤ちゃんは、泣くことしかできないのではなく、泣くことで今を懸命に生きているのだと思います。

そして私は、その姿に勇気をもらっていたはずなのに、いつの間にか疲れの中で、そのことを忘れていました。

子育てをしていると、親が子どもに教えているようで、実は子どもから教わっていることの方が多いのかもしれません。

4歳の娘の何気ない一言に、赤ちゃんの泣き声の奥にある命の懸命さを、あらためて思い出させてもらいました。

今日もまた、泣き声の中に、精一杯生きている小さないのちの姿があります。

お寺

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